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マニラで生きる社会起業家。ユニカセコーポレーション代表中村八千代さん【前編】

前編では、国際協力に携わっていた中村さんがフィリピンにたどり着いた経緯や、ユニカセを立ち上げるきっかけとなった体験、現在の活動内容について伺いました。
後編は、その前段階にあたる個人史と、そこから生成された行動指針やパーソナリティに迫ります。
インタビュー前編はこちら
マニラで生きる社会起業家。ユニカセコーポレーション代表中村八千代さん【前編】

中村八千代

中村 八千代(なかむら やちよ)さん
1969年、東京都生まれ。社会的企業ユニカセコーポレーション創設者にして、特定非営利活動法人ユニカセ・ジャパン理事長。36歳のとき国境なき子どもたち(KnK)の現地派遣者としてフィリピンに赴任。2010年5月にユニカセを法人化、8月にレストランをオープン。以来、貧困地域の子どもたちのケアや青少年たちに雇用の場を提供し続けている。

 

壮絶な過去とそこから生まれた視点

壮絶な過去とそこから生まれた視点
— 人生の転機になったアメリカの同時多発テロが起きるまでは、何をされていたんですか?

連帯保証人だった父親の会社が潰れたのをきっかけに、4億円の借金を背負ったんです。20代の後半はその借金返済に追われました。

— 4億円…を肩代わりした、と。

そうなんです。今ふりかえると馬鹿だったなって思うんですけど、その時期に3回自殺未遂しています。でも、周りに恵まれているということに改めて気付いたのもその時です。抱えているものをいかに誰かとシェアできるかが、何よりも大事だということを友達に教えてもらいました。

— ひとりで抱え込まず共有することの大切さですか。

やっぱり最初は誰にも言えず、打ち明けられたのは3ヶ月ぐらい経ってからだったと思いますが、借金を背負っても家をなくしても家族をなくしても、“中村八千代”っていう個人を支えてくれて認めてくれる友達がこんなにいたんだって改めて気付いたんです。

— 素敵な方が周りにいらっしゃったんですね。そのときの経験から今だから思うことが他にもありますか?

当時1番心に刺さったのは本の中で出会った「今起こっている事は必然で必要でベストな状況なんだ」っていう言葉です。そんな状況だったんで「えっ…」と思ったんです。でも「人生の最終的な目的を達成するために全ては必要不可欠な過程であり経験なんだ」と、その言葉を理解したときに私は不幸じゃないって思えたんです。

— どんな苦難も生まれてきた使命の一部にすぎないということですか?

この考え方って自らの命を絶つことを止められるような気がするんですよね。でも、それは自分で気づくしかない。日常なり本なり、色んなところから発せられているメッセージの中から、いかに自分に合うメッセージをちゃんと自分なりに解釈して取り入れるかっていうのが生死の境なのかもしれないです。

地球市民だという感覚を持ちながら、自分のルーツを大事にするということ

地球市民だという感覚とそれでもルーツを大事にするということ
— 「死」については私たちが呼ぶところの先進国と貧困地域で、異なる性質の問題を抱えていますね。

レア(ユニカセレストラン従業員)を東京に連れていったときに、人身事故に遭遇したんです。「こんなに便利なのに何があったの?ご飯も食べられるよね?仕事もあるよね?友達は?親は?こんなに裕福な国なのに、なんで自分で死ぬ人が多いの?」って質問責めにされましたね。

— 純粋な質問ですね。単なる二元論で片付く話じゃないだけに貧しさや豊かさって本当に難しいですよね。中村さんの考える貧困って何ですか?

やっぱり人間が作った負の遺産ですよね。人間の欲求が生み出した社会構造なので、私は残念ながら貧困はなくならないと思っています。そもそも我々の中で貧困という言葉の枠に入れてしまっていますが、彼らの中でそれはごく普通の日常なわけです。なんていうか人間って面白いですよね、勝手に決めつけたがる。

— なるほど、そもそも誰が決めたのかってことですよね。決めつけたり分類したりしてしまった方が楽だからかな。では、そういった視点からフィリピンで活動される中で大切にしていることはありますか?

自分のアイデンティティですね。根っこがなければ木は育たないじゃないですか。その根っこの部分がアイデンティティーだと思うので、「私は日本人として中村八千代として生きています」っていうのを大事に生活しています。

— どこからきてどこへいくのか、いかに生きるかにおいて重要な問題だと思います。

はい。みんなが地球市民であり国境そのものは関係ないのですが、自分がどこからきたのかや何人なのかっていう“ルーツ“には誇りを持つようにしようねっていうのはインターンの子たちともよく話をしています。

ー いいですね、地球市民。

だって、我々がパスポートだけであらゆる国に入国できるのは、日本人は信頼できるっていうのを証明してくれた先輩の方々がいたからです。だから今度は自分たちが後世の人たちにより良い環境を残さなきゃいけない責任はあると思うんですよね。

誰かに認められる必要はない

誰かに認められる必要はない
— 後世へのバトンですね。私自身も学生の頃に海外をあてもなくふらついていた時にはじめて覚えた感覚ですね。日本の若者たちへのメッセージや伝えたいことはありますか?

自分の身の回りの世界の中での悩みしか知らないから、深く悩んじゃうんだと思うんです。だからちょっとでもこういう地域や問題に目を向けてみて、違いを考えてみたらいいと思います。比較する必要はないと思いますが、気づきはあると思います。

— みえている世界だけではなく、その他にも世界があることを実感する。9.11や3.11など大きな事件が個人の気づきのきっかけになりやすいのは、否が応でも身の回りの世界以外の世界を強く感じることになるからかも知れませんね。

あとは、変わり者って言われて快感に思う位でいいと思います。私は坂本龍馬が大好きで「我が成す事は我のみぞ知る」っていう言葉があるんですけど、誰かに認められる必要はないと思うんですよ。認められるためにやろうとするから必要以上に悩んだりするんです。

— その人の人生は批判したり認めてくれたりする人のものではないですもんね。そういう意味では客観視し過ぎずに、わがままにありのままに感じたままに突き進むことも時には必要なのかもしれません。

そうですよ。パイオニア。

ー では、インタビューは以上となります。ありがとうございました。

インタビュー後記

インタビュー後記
彼女が立ち上げた社会的企業”ユニカセ”の名は造語で、「どんな環境に育とうとも、私達一人ひとりはその人にしかない個性や強みがあり、その存在自体に大きな価値がある。それに気づき自分の才能で勝負していく。」という意味がある。

母親の死と4億円の借金に始まり、その後も数えられないほどの大きな試練を乗り越えてきた中村八千代さん。取材の最後に、壮絶な道のりを微塵も感じさせない人懐こい顔で笑いながら、好きな言葉を教えてくれた。

「The successful person is the person who never gives up.(成功するまであきらめなかった人が成功者だ)」

明るい光をたたえたその笑顔、私はマニラで不撓不屈の天使をみた。

昔から縁のあるフィリピンにて、肩書きのない個人として様々なことに挑戦しています。その中でこのフィルポータルでは企画・編集・執筆に携わらせていただいてます。旅と自然と言葉とバスケが好きで福岡→京都→東京を経て、フィリピンに流れ着きました。水のような風のような人生です。「何か一緒にしたい」という声もお待ちしてます。Twitter

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