フィリピン留学相談はスピーディーで選ぶ時代
人生

この記事を書いた人

トビタテ留学1期生中川瑛さんの提唱する物語理論とその哲学について

トビタテ留学1期生にして、株式会社ちえもので代表取締役を務める中川瑛さん。トビタテの広報や自身の物語理論をベースにしたワークショップの開催など幅広く活躍しています。現在は弁護士や商社、メーカー、官僚といった枠にとらわれない異文化異所属の越境研究所を設立中。そんな若手学者として頭角を現す中川さんにご自身のルーツと見据える今後のビジョンについて伺いました。

中川 瑛さん(25)
中央大学在学中にオックスフォード大学とストラスブール政治学院へ留学。在学中に株式会社ちえものを設立。2017年4月に著書『最高のキャリアの描き方』出版。

 

トビタテ留学と物語理論提唱のあらすじ

トビタテ留学と物語理論提唱のあらすじ
— では、よろしくお願いします。経歴を拝見すると実に幅広い範囲で活動をされていらっしゃいますが、現在の主な活動を教えてください。

大学で利用した留学制度トビタテの広報や、そこから派生した物語cafe運営です。他にも高校卒業後、大学進学までの2年間で仕事をして着想を得た越境研究所など全部で15個のプロジェクトを進行中です。関連する説明会やワークショップ、学会、執筆などを行っています。

*トビタテは文部科学省が官民協働で運営しているグローバル人材を育成するための、奨学金制留学制度です。

— 15個…驚きました。では、今回は我々のメディアの理念である「世界へ飛び出す人をドラマする」という観点から、トビタテと中川さんの関係性について。そして物語cafeの2つに絞ってお伺いしていきます。

トビタテに関わっている理由は、僕がこの制度の1期生だからです。現在も広報や留学後のトビタテ生のコミュニティの継続、留学相談などを通して関わっています。そして相談を受ける中で感じたことが、物語cafeの運営にも繋がっています。

— 留学相談から生まれたのが、物語cafeというわけですね。

はい。トビタテでは過去・現在・未来の自分に一貫性があり、それを自分も相手も納得できるような言葉にして伝えられる人が、留学候補生になれます。しかし実際には、熱意や内容はあるのにうまく言葉にできない、伝えられない人が非常に多いです。

— なるほど。なぜでしょうか?

原因の多くは自分の内側を、過去・現在・未来の一連の流れを意識した『物語』にまで昇華できていないことでした。これが僕の提唱している物語理論です。そこでワークショップを通して、訪れた人が自分の人生を物語化する場として物語cafeという活動を始めました。

【トビタテ留学経験者募集】あなたのお話聞かせてください!

北海道に生まれ、不完全燃焼に終わった過去

北海道に生まれ、不完全燃焼に終わった過去
— そのような経緯があったんですね。では現在、様々な活動をされている中川さんご自身にはどういった物語があるのでしょうか?

北海道に生まれた僕はスーパーインテリマンになるのが夢で、幼い頃はあだ名が“博士”だったほど本と勉強が好きでした。しかし、地元にはTSUTAYAはあったのですが、読みたい本がたくさん置いてあるような本屋はなく情報も入ってきません。年齢が上がるにつれて授業や教科書だけでは満足できず、不完全燃焼の日々が続きました。

— 北海道は広いですからね。TSUTAYAだと漫画やCD、一般的な小説が置かれることが多いでしょうし、中川さんの興味とはズレがあったかもしれませんね。

そんな環境で高校まで進み、センター試験の直前にネットでたどり着いたのが、2ちゃんねるの受験板でした。そこで初めて、中学の受験があることや中・高・大学のランク、レベルや目的に合わせた参考書の情報が整理されているのを見ました。

— 信憑性はともかく2ちゃんねるには大量の情報が詰まっていますよね。

情報を元に札幌まで行き、大型書店で参考書を買うとその後は成績が急上昇しましたが、センターまでに間に合うわけもなく。情報や環境だけでこんなに損をしていたのだなと思うと腹が立ち、悲しかったですね。そんな思いの中、親と喧嘩して家を飛び出してしまいました。最近までこの過去がずっとコンプレックスでした。

肩書きのない個としての自分。新天地の繁華街で見えたもの

肩書きのない個としての自分。新天地の繁華街で見えたもの
— なるほど。それで唐突に高校から大学までの2年間関西にいらしたんですね。

繁華街で仕事をする中で国籍を持ってない人や、2桁の足し算ができない子を見たときに、自分がはるかに恵まれていたことに気づきました。この関西と地元での過去が社会の不平等をなんとかしたいという思いのきっかけです。

— 肩書きのない状態で、今までと全く違う世界に飛び込むことにより、新しい視点を得られた。本筋と外れますが中川さんは、EUなどではよくあるギャップイヤーについてどう思われますか?個人的には早い段階での休学や浪人など、肩書きのない自分と対峙してみる期間があるのは面白いと思っています。

現在、世界一周の船旅で有名なピースボートさんとも仕事をしています。そこでまさによく見聞きするのが、休学での就職への影響や親の理解が心配だとかで諦める人です。

— それは我々の扱っている語学留学の現場でもよくあることです。

しかし、休学生ばかりのトビタテ生と関わっている僕は、休学が挑戦できない理由にならないことを知っています。自分の物語を留学先で作れれば何の事は無いです。現にトビタテ生は休学することによる就職への負の影響を受けていませんから。

— 身を以て体験されて、なおかつ多くの学生も見られているので説得力が違います。ただ、休学中に違う道に目覚めた場合、復学の際に領域を変えることはなかなか難しい現実でもあります。であれば、大学進学前や就職前の節目で時間を設けるのも選択肢の1つですよね。

そう思います。最近は人生の早い段階で、そういった所謂レールから外れること自体が1つの選択肢としてレール化していく流れは、確実にできつつありますね。拙著『最高のキャリアの描き方』にも、そうやって挑戦するトビタテ生の事例を紹介しています。

自力で切り開いた道で見つけた財産と生きる現在

自力で切り開いた道で見つけた財産と生きる現在
— 話を戻します。大阪でお金を貯めて東京の中央大学法学部に進学され、分岐点であるトビタテでのフランス留学を経験されたんですね。

はい。社会の不平等を是正することへの思いは大学で学ぶ中で、世界の人権保証に広がりました。分かったことは世界の人権保障を学ぶなら、英語と日本語の2つでは足りないことと、それを踏まえて最適なのは、EUの欧州人権裁判所があるストラスブールだということです。そこで留学を決意し、仲間たちに出会いました。

— なるほど、そして今に至るわけですね。ずばりトビタテで得たものは?

この言葉を使うのは恥ずかしいけど、仲間です。思いついたこと、やりたいことにみんなが協力してくれるし僕も協力する。こんなコミュニティは生まれて初めてでした。僕にとって一番大きな財産です。また、自分が主体性を持ってそのコミュニティの土壌を作れたのも大きな収穫でした。

— 仲間を得て活動される中で、先ほどおっしゃられていたコンプレックスについてはどうですか?

本当に最近です。東洋大学のゲスト講師として呼ばれたことがあり、「環境に負けずにここまできたぞ。」とその辺りからやっと自分を許せるようになりました。実は今年5月11日にもまたお呼び頂き、越境研究所代表として学問と社会についての話を、そして物語理論の提唱者としてキャリアについての話を3コマ程させて頂きました。

スーパーインテリマンの描く物語の未来

スーパーインテリマンの描く物語の未来
— 過去に勝ったんですね。解放されたいま、個人的に描く目的はありますか?

個人レベルでいうとシンプルで、幸せでありたいです。僕の思う幸せは、不足を感じない状態です。乾くことがない欲望という意味ではなく、今に納得して十分に楽しめている上で、もっと先に進んでいけるようなそんな感覚が幸せな状態ではないかと思います。

— 周りへの影響という面ではどうですか?

やはり人権保証が一番の関心で、生まれた環境によっていろんなことが制限される状態に不平等さや不公平を感じるのが僕の根本の問題意識なので、そこにアプローチしていたいですね。

— やはり、初期衝動である不平等の是正が根本にあるわけですね。おすすめの本とかあれば、教えてください。

『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか―世界的貧困と人権』英語のタイトルだと“world poverty and human rights”です。倫理学の観点から貧困を見る衝撃的な本でした。

— 今の社会に対して現状思うことはありますか?

今の社会というよりさまざまな活動の中で思うことは、やりたいことがわかっている人が少ない。やりたいことが分かっていても、それを実現する方法を知っている人が少ない。そして方法を知っていたとしても、やりたいことを実現するために動いている人も少ない。という3つです。

— 解決法はありますか?

やりたいことを見つけること、それを手探りでもとりあえず実際にやってみること。この2つを何度も繰り返すことですね。身を以て失敗しないとやり方はわかりませんから。やり方がわからないから、成功するところを想像できないという悪循環がある。僕も失敗を繰り返してここまできました。

— 何もしていない、始まっていない状態のまま「できない」「終わった」と思っている人が多いのかもしれませんね。ありがとうございました。インタビューは以上となります。

編集後記

インタビュー後記
穏やかな佇まいとゆったりとした口調。そんな表層のイメージからは想像も及ばぬほど人生を冒険し、様々なレイヤーを渡り歩いて得た実践知をもって物語理論提唱に至った中川さん。多くの日本人が選択肢をクリアに見つけられずに悶々とする今日、“博士”と呼ばれた幼少期から蓄積し続けた学びを具体的な解法に落とし込む、それはまさに若者の道しるべと言って然るべきでしょう。

こんな風に語ればなんだか中川さんが遠い人に思えてしまうかもしれません。しかし、複雑なように見えて、実はもっともシンプルに物事の原型を見よう、言葉にしようとしているように思えます。

友達がいないことで悩んでいる少年が主人公のドラマ、オチがわかりますか? ひねらないで考えれば大体の人は答えが浮かぶと思います。そう、友達が出来るんです。

(中川さんnote『トビタテ!物語café@渋谷、無事に開催成功』より)

万人にわかること、つまり“最大公約数”を突破口に人の動きを喚起する。誰にでも備わった想像力という初期装備を呼び起こし、奮起させる。中川さんの挑戦ははじまったばかりです。

中川さんや物語cafeに関する記述
note:中川瑛
トビタテ!物語café@渋谷、無事に開催成功

インタビューと社会派コラムを担当するライターです。いろんな場所に行って、たくさんの人と話して、その声を代弁できる情報屋でありたいと思っています。個人ブログ(さぐりさぐり、めぐりめぐり)で紀行文・コラムも書いてます。 Phil Portal全員のメンバー紹介ページはこちら

SOUDAバナー

編集部からのおすすめ記事一覧