セブ島で暮らす上で避けられないことの一つ。それは渋滞。待つことがこの世で一番嫌いな筆者は取材の帰り道、進まないタクシーに耐えられずついにタクシーを降りて歩きだした。
車では一瞬で通り過ぎるその景色は、歩くことでいつもとは違った姿を見せてくれた。
慢性的な交通渋滞
マクタン島での取材を終え、セブ島にある事務所に帰るためにタクシーに乗り込んだ。マクタン島には度々来ているが、その度に懸念していることがある。
特にセブシティとマクタン島を結ぶ2つの橋は常に大渋滞が発生していて地元のタクシードライバーでさえもこの区間は客を乗せたがらない。
セブ島に限った話ではないがフィリピンで交通渋滞が起こるのにはいくつか理由がある。
まずは電車やバスなどの公共交通機関がないこと。庶民の足として確固たる地位を築いているフィリピン名物のジプニーは路線こそ持っているものの乗り降りはどの場所でも行われるためその分他の車などの流れを止めてしまう。
さらにそうしたジプニーやタクシードライバーはまず譲り合うことをしない。信号機なども稀でそうした状況を加速させて文字通りまさに混沌を生み出している。
他にも理由を挙げればきりがないほどこの渋滞の根本解決は難しい。
歩き出す
いつものようにじっとしていられなくなってくる。
比較的交通量の少ないセブシティからマクタン島への往路は200ペソ(約470円)ほどで済んだにも関わらず、帰りはマクタン島を出られないまますでにメーターは往路の運賃を大きく超えている。ちなみにセブ島のタクシーは初乗り40ペソ(約95円)だ。
参考:【フィリピン】タクシーの乗り方【初心者向けに解説しました】
進まない車。動いているのはタクシーのメーターだけ。
そしてメーターが250ペソ(約590円)を回った時ついに決断する。
「歩こう」。
「正気か?」と言うタクシードライバーをよそ目にぼくはドアを開けて外へ出た。
動かないなら自分で歩いた方がきっといい。筆者は自分の足でマクタン島からセブ島へと渡ることにした。相変わらず車たちは動かない。
橋に差し掛かる。男が小さなボートを漕いでいる。どこに行くのだろうか。
あの山積みされているのはゴミだろうか?タンカーがそれを運ぼうとしている。
リゾート地のイメージが先行するセブは実はフィリピン第二の都市でもある。手前のゴミ山と背後の高層ビルのコントラストがフィリピンという国を映しているような気がした。
「ん?あれは…」
よく見ると洗濯物が至る所に干され、人の動きが見える。水底には無数のゴミが沈んでいる。
二人は何をしているんだろう。あそこからこっちはどう見えるだろう。
その時道路では渋滞にはまったタクシーの窓を5歳くらいの少年がボロ切れを使って拭いている。ドライバーが窓を開けて1ペソを渡した。
歩く速さでものを見る
我ながら何をしているんだろう。なんて思いながら歩いてみたわけだが、意外にもその行程には発見が多く、今度はあそこに行ってみようといった次に取る行動のきっかけにもなったりする。
“こっち”からは見えて、“あっち”からは見えない。
タクシーの窓越しには見つけられなかったものが歩くことで捉えられるのかもしれない。
いつもの道を明日は歩いてみたらどうだろう?
撮影者:井上昂大