英語力を測る基準として、日本では企業や学校などで広く使われているTOEIC。
基礎的な英文法や語彙力がつくと言われている一方、実際に海外に出るとあまり使わないなどと言う意見も耳にします。
これからの時代、英語が非常に有効なツールになることは、間違いないでしょうが、TOEICを受けること自体に価値はあるのでしょうか?
そこで今回は神田外語大学の講師で、TOEICの専門家である神崎正哉さんに、TOEICの価値・活用法について詳しくお話をお伺いしてきました。TOEICを受験するか悩んでいる、どう使えば良いのか分からないという方はぜひご覧下さい。
神崎正哉さん
神田外語大学講師、多数のTOEIC攻略本の執筆者。TOEIC受験回数128回、平均985点。
TOEICを受けることに価値はあるのか?
— はじめに、TOEICの有用性について、自身のご意見をお聞かせ下さい。
まず、はじめに言えることはTOEICをやっただけでは、スピーキングとライティング力は伸びないということです。
英語を使う、英語でコミュニケーションを取るってスピーキングとライティングが必要なんですね。でもTOEICテストの項目はリーディングとリスニングしかありませんので、TOEICだけ勉強するとそこがちょっと足りなくなってしまいます。
そして、この2つって1人だとなかなか勉強できないんです。
リスニングとリーディングは1人で本を買って家で勉強するだけで良いんですけどね。スピーキングは話す相手がいないとなかなか難しい。ライティングは見てくれる人がいないと、これでよいのかな…?って思ってもそこで終わっちゃう。
だから勉強が難しいから、日本はなかなか広まらないっていうのもあると思っています。
日本で働いている社会人の人は仕事が忙しいので、出社前とかに時間見つけてTOEICの勉強をしてる人が多いです。逆に言えば、彼らにとってはTOEICって割とやりやすい部分でもあるんですね。
なので、スピーキング、ライティングになると腰が引けちゃうっていう日本人の意見もすごくわかります。
最近はオンライン英会話とかで勉強を始める人も結構増えてきてるんですけど。やっぱりまだまだ広がらないですね。
— やはりTOEICは受けなければならない目的がある人が受けるべきなんでしょうか?
こればかりは人それぞれだと思いますが、そういった試験がある方がフォーカスが定まるので、良いと思います。
何もないと英語勉強しても英語ができるようになったのか、なってないのかわからないので。
そういった意味で、TOEICを受ければちゃんと点数で出るし、他のテストなら合格・不合格って出るので、利点はあると思います。
— たくさんのTOEIC受験者を見てきたのと思うのですが、みなさんどのようにTOEICの価値を活かしているのでしょうか?
会社で使う人が多いですが、ただTOEICが好きっていう人もいますね。
実はTOEICってスピーキング・ライティング用のもあるんです(TOEIC S&W)。TOEICのオフィスもそのことをよく分かっていて、ちゃんと話す書くのテストも作ったんですね。でも受験者数は普通のTOEICの100分の1なんです。
周りになぜ受けないのか聞くと『いえいえ、無理です。私には』とか『いえいえ、スピーキングはまだまだ弱いです』とかそういう返事が返ってきます。
メンタリティーの部分というか真面目にお勉強するのが好きな人は、ちょっと苦手なのかも知れないですね。
TOEICをどう使うか?海外で最低限必要な英語力とは
— では実際にTOEICで満点近い点数を取った方はどのようにスキルを使っているのでしょうか?
僕の友人はTOEICで満点を取ったら海外(カナダ)に派遣されて、2年間くらい現地のスタッフの指示をしていました。
そのときにTOEICで習った表現とかが、すごく仕事で役立って、スピーキングとライティングも伸びたって言ってましたね。
— そういう時の判断材料にもなるんですね。
そうです。でもTOEIC満点取っていても全然話せない人もいるので。ちょっと微妙なところでもありますね。もちろん、自分の英語力の参考値としては非常に便利なテストだし、英語力を伸ばすのにも土台になることには変わりないんですが。
それこそ、フィリピン留学する方々はTOEICなんて知らん、コミュニケーションさえ取れればいいんだって方も多いと思うんです。それはそれで良いと思います。
— TOEICなどを無視して英語力ゼロで海外行ったり留学することについてはどう思いますか?
やっぱり問題は効率ですよね。
効率的に学ぶっていうことを考えたら、たとえマンツーマンレッスンがあるフィリピンとかに留学したとしても、説明は全部英語なので、その説明自体が分からないっていう部分はあると思います。だからある程度、本当に最低限だけ勉強しておいたほうが効率的に学べると思います。
TOEICで言うならば500点以上のレベルは無いときついんじゃなかな、と個人的には思います。
— そういった方が、最初にやるべきこととは?
やっぱり基本的な文法じゃないでしょうか。文法って言っても大学入試に出るような文法じゃなくて、中学3年間の文法で十分です。
逆に言うと、中学三年間の文法は最低限知っておかないと厳しいと思います。
あとは基本的な語彙ですね。中学で習う単語ってたぶん1000語くらいだと思うんですよ。なのでその1000語と中学英文法。これはやっておきましょう。日本語で書いてある本のほうが日本語で覚えられるので、効率よいと思います。
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— それは自習で十分ですか?
もちろん、自習で十分。
中学校のときに使っていた教科書を引っ張りだして、それが完璧にできれば、結構出来ると思いますよ。高校のレベルは別に普通のコミュニケーションが取れるんであればいらないと思います。
ただ例外もあって、言葉通じなくても外国行ってやっていけるとか、最低限のコミュニケーションを現地で覚えるとか、そういう人はあまり気にしなくても良いのかな、とも思いますね。
インタビュー後記
今回のインタビューですが、実は神崎さんがブライチャーというフィリピンの語学留学に留学されていたんです。英語のプロが留学ってどういうことだ?と思ってインタビューしに行ったんですが、その時にTOEICについても意見を聞かせていただきました。
神崎さん曰く、プロでもやはり苦手な部分や弱い部分はあるそうで、(素人目から見たらネイティブ並だとは思うのですが)それを補強したいということでした。その時のインタビューもとても参考になると思うので、ぜひ見てみてください。
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