セブ島民の暮らしにとって欠かせないサリサリストア。セブ島にしばらく滞在していると、その数の多さに驚きます。ローカルエリアでは、10mごとに1件あったりすることも。なぜそんなにたくさんものサリサリストアがあるのか考えてみたところ、ひとつのことがわかりました。
サリサリストアとは?
サリサリストアとは、セブ島民ご用達の、コンビニのような小売店です。お米・小麦、ジュースやビールなどの食品から、ティッシュ、洗剤、タバコなどの日用品が販売されています。
お店の規模や置いてある商品は店舗によって異なります。セブ島の住人たちにとって、おそらく最も身近な小売店でしょう。
日本で言うところの、近所の八百屋さん、わりと何でも売っている謎のお店などをイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。
窓口が格子で覆われており(防犯のため。またお店によっては格子がない場合も)、外から見ると何が売っているのかほとんどわかりません。日本人の方が、滞在中に利用することはほぼないでしょう。
サリサリストアの仕入先
さて、勘のいい方はサリサリストアを経営される人たちは「どこから商品を仕入れるか?」という疑問が湧いていることかと思います。
彼らは「スーパーマーケット」もしくは「パブリックマーケット」というところから仕入れます。スーパーで買い物をしていると「そんなに買う必要ある?」というくらい大量にものを買っている人を見かけることがあります。疑問に思っていたところ「サリサリストア用に仕入れているんだよ」とセブに詳しい知人に教えてもらいました。
サリサリストア経営者にとっては、スーパーマーケットが卸売業者という感覚ですね。そこで仕入れたものに利幅をつけて、住民たちにいろいろなものを販売しています。
経験者(日本人。お会いした時はかなり驚きました)によると、お米やビールなどが人気だそうです。
参考記事:【衝撃の7年】フィリピン水準の賃金で働くひとりの日本人が、セブで起業するまでの物語 〜前編〜
サリサリストアを利用してみた
サリサリストアではかなり細かい単位で買い物をすることができます(上記写真のように、タバコ1本単位など)。タバコ(マルボロ・ライト)の価格は1本あたり3ペソ(現在のレートで約8円)でした。
コーヒーのパックは1つあたり7ペソ(現在のレートで約18円)でした。
実は、商品は割高。住民たちはなぜサリサリストアを利用するのか?
スーパーなどの小売店から仕入れているとなると、当然ながら商品のひとつひとつは割高となります。小売店から購入したものに、さらに金額を上乗せしているわけです(先ほどのコーヒーパックは、スーパーで購入すると1つあたり5ペソ)。
普通だったら、そんなところから日用品なんて買いませんよね。しかし、サリサリストアは潰れない。一体なぜでしょう。
ポイントは、ものを販売する単位です。
先ほどぼくは、タバコを一本だけ買いました。サリサリストアでは、このような売り方が主流なのです。利用者のメインは、あまりお金のない人たち。彼らはスーパーなどで販売されているような、まとまったものが買えないのです。
バラ売りで、食べ物・飲み物・日用品を買い、その日暮らしで生活をしています。時には「2週間後にお給料が入るから、それまで待っててくれる?」と言ってツケ払いで購入する人もいるそうです(これを「ウータン」と呼びます)。
サリサリストアから格差社会を見る
サリサリストアの経営を支えているのは、あまりお金のない人たち。スーパーなどに置いてある商品には手が届かず、小分けにされた食べ物や飲み物を手に入れて暮らす。
考えてみると、これはちょっとおかしな話。お金がないにもかかわらず、4重(生産者・卸売業者・小売業者・サリサリストア)にも利幅を上乗せされた割高の商品を買うという選択肢しかない。
これでは節約のしようがありません。裕福でない人たちが、その状況を打破しにくい構造ができあがっているのです。サリサリストアが潰れない理由は、この構造にありました。
フィリピンにある経済格差の姿が、サリサリストアという小さなお店から垣間見えてきます。そう考えると、こうして好きな仕事をできている自分がいかに恵まれているかがよくわかりました。