ここまで第1話では「海外就職」を、第2話では「日本人と英語」についてお話を進めてきましたが、締めくくりとなる今回は「海外で生きるマインド」についてお聞きしていきます。
海外や留学という漠然としたキラキラ感、実際にそこにはどんな生活や発見があるのでしょうか。それぞれのゲストが向き合ってきた留学生や自身の問題などを踏まえてお話いただきました。
責任と自由の楽しさ
岩辺「ここまで“海外就職”“日本人×英語”をテーマにそれぞれの考えを語っていただきました。それらを踏まえてここからは、“若者と海外の可能性”について考えていきましょう。
“日本×海外”について色々な意見がありますが、この時代に20~30代の若者が海外、とりわけアジアに出て行くことで得られるものにはどんなものがあると思いますか?光本さんからお願いします。」
光本「ぼくが一番思うのは、アジアの勢いを体感できるということです。日本が人口減少をはじめ悲壮感を漂わせる中で、若い人の多さや街の活気、そういったところに日本との違いを感じています。本当に通りやお店、とにかく人が多い!」
岩辺「街の活気や喧騒には確かに勢いを感じますね。」
光本「そうですよね。街の中には良いところもあれば、もちろん目を伏せたくなるようなものもあります。そういったカルチャーショックに出会って価値観を崩されたり、立て直したりする過程で視野が広くなると思うんです。
日本の良いところ、悪いところ。そしてアジアの良いところ、悪いところ。両方知っている上で選択できるというのは強みと言っていいんじゃないですかね。」
岩辺「なるほど。そうした体験を自身のキャリアに反映させるとすればどうしたら良いでしょうか?」
光本「もしも将来的にアジアや海外で働きたいという思いを持っているのであれば、留学であったりインターンなどで一度実際に来てみるのもいいと思います。ライフスタイルや環境の違いから自身の将来へのヒントを得られると思いますし、その上で日本でもできることなのか、ここでしかできないことなのか、ということを決めていくのもアリなのかなって。」
岩辺「ありがとうございます。ヒントが散らばる場所という位置付けで、きっかけや選択肢を探していくのも良いですね!金子さんはどうお考えですか?」
金子「孝さんは外面についてお話されていたので、ぼくは逆に内面についてお話したいと思います。ぼくもそうですが、若い世代が海外に出ることで内面の“危機感”に気づけるということ。」
岩辺「危機感について詳しく聞きたいです。」
金子「元サッカー日本代表の中田英寿選手が20代で現役を引退して、その後世界各地、日本中を長期間“自分探し”の旅をしたのは有名ですよね。当時は一部メディアによって揶揄されることもあったこの言葉ですが、今自分が表現した“危機感”という言葉がまさに、中田選手にとっての“自分探し”だったんじゃないかなと思います。
これまでにもお話させていただきましたが、日本にいるときは仕事がある状況が当然だったのですが、今は全て自分で作り出せないといけません。そんなタイミングではじめて自分としっかり対話をしようとして、そしたら自分何もできないじゃないか!って思ったんです。
ただ課せられた仕事をしていただけで仕事をしたつもりになっていたんだな、と実感して“これはまずい”と思えたのが、ぼくの中でひとつ収穫でした。今も仕事をしながらそんな感覚を常に持っています。」
岩辺「危機感…、ぼくも非常に共感します。自由と責任は表裏一体ですね。田島さんはいかがでしょう?」
田島「これは今でも覚えているんですけど、海外で働いてみて、日本人がどんな人種なのかということがわかりましたし、そこにプライドも持てましたね。」
岩辺「どんなところに“日本人”という要素が垣間見えましたか?」
田島「サービスや教育面はもちろん、バギオの語学学校のほとんどは韓国資本ということもあって日本人としてのアイデンティティにボーンってぶつかったんです。
昨今、日本人のサービスに対する要求が過剰だと言われますが、やっぱりぼくは日本人だけが気付けるところや、できる気づかいがあると思うんです。韓国人やフィリピン人には任せられない部分。そういうところに何かビジネスチャンスがあるんじゃないかっていう思考を得られたところが大きいですね。」
岩辺「海外に出て自分を一変させるのではなく、日本で当たり前にしてきたことと現地をどれだけ照らし合わせて見られるかが大事になってきそうですね。」
田島「そうですね。どう評価されるのかを間近で見られるのも大きなポイントです。ずっと日本にいるとわからないような自分の役割や仕事に気付きやすく、その結果も早く出る場所ということは覚えておくといいかもしれないです。」
岩辺「中にいると見えないことがどれだけ他の場所で価値あることなのかというのを感じますね。」
田島「システムやマネジメントなんて特にそうです。日本にあって円滑に進んでいる部分がフィリピンにはなかったりするので、そういうのを導入するだけでも“日本人すご!”となるんじゃないでしょうか。
そういう機能をいろんな場所に運ぶ役割をもっとたくさんの日本人がしてみるといいのかなと思っています。」
岩辺「大げさな話、日本で働くことに喜びを感じられずに自己評価を低くしてしまっている人にとっても、できることが見えてくることでモチベーションを高められることにつながっていきそうですね。今の話を聞いてそう思いました。では西澤さんはどんな意見をお持ちでしょうか?」
西澤「責任と自由の楽しさを知れるということじゃないでしょうか。」
岩辺「責任と自由。金子さんの解答と通ずるところがありそうですね。」
西澤「そうかもしれないです笑。結構皆さん自由になりたいって思いで海外に来るかと思いますけど、ただ自由なだけって意外と面白くないんじゃないかって。自分がこれをやる!と言って、ちゃんと責任持って自分を追い込みながら挑戦してみる。そういう時に喜びが生まれるとぼくは思っています。」
岩辺「日本でそれが実現しにくいのはどうしてでしょう?」
西澤「あれもこれも自分がしなくても、もうすでにされてしまってるというのも大きいんじゃないでしょうか。逆にフィリピンとかだとその点顕著にあれもまだ、これもまだできていないという点が多いので人の創造力が刺激されるんだと思います。
特に20代の若者の停滞していると思えるところが、自分がしなくても他の人がやっちゃうし、俺なんかよりもすごい人がいっぱいいるから…と自分の存在感をすごく低くしてしまうんです。全体的にそういう時期なのかもしれませんけど、そんな時期だからこそ一回海外に逃げてきてもいいんじゃないかなって思うんです。
たとえそうやって逃げてきたとしても、そこに日本人が自分しかいなかったり、海外の人たちと働くことで自分にできることを発見できます。そういう仕事の面白さや自分を肯定する場として留学や海外就職はすごく大事な機会だと思います。」
岩辺「逃げることを認める。結果的に一回り大きくなるためにも必要なプロセスかもしれませんね!」
自分をさらけ出す
岩辺「ではこの企画最後の質問になりますが、バギオで活躍するみなさんにとって“海外を楽しむためのマインド”とはどのようなものですか?順にお聞かせください!」
光本「そうですね。海外で生きるということでしたら“自分をさらけ出してください”という言葉をぼくは贈りたいです。日本人って変に自分をつくるんですよ。世間体とかを気にしてまるで別の人間みたいに。
でもこっちでは、自立した個を提示できないと相手にされないんです。なんというか、よりストレートなコミュニケーションだと思っています。なので常に自分を出せるように準備しておかないといけませんね。」
岩辺「さきほど西澤さんもおっしゃっていましたが、日本では察しの文化という面が強いですからね。そういったストレートなコミュニケーションは最初慣れないかもしれませんが、意外と快活なことでもあるとぼくも思います。」
光本「はい。遠回しにしか言えない部分が多いかと思いますが、せっかく何かを変えようとして来るんですから、さらけ出してください!ということです。」
岩辺「ありがとうございます。では金子さんお願いします!」
金子「ぼくは“やるか、やらないか”これに尽きます。」
岩辺「金子さんの座右の銘ですね!いつからこのポリシーを持たれているんでしょうか?」
金子「バギオに来る前にテレビを見ていたら永ちゃん(矢沢永吉氏)が言ったんですよ。“やりたいことやらない人生よりさ、やっちゃった方が絶対楽しいじゃん?”って。」
田島「え?今もしかして真似してた?」
一同 笑
金子「それで、ちょうど渡航を決めたぼくにとっては、まさにそんな自分の決意が言語化されたような気がして。考えてから行動する人にとってはデメリットが多く思えてしまうこともあると思いますが、ぼくは行動が先に出ちゃうタイプなので、この言葉は大事にしています。
でももしこの決断をしていなかったら30代後半から40代になって、もう戻れないと気づいたときに後悔するのは確実だったんじゃないかなと思います。なので海外というか何においてもそうだと思いますが、するかしないかの選択。これに尽きると思うんです。」
岩辺「ありがとうございます。金子さんらしい勢いのあるメッセージでしたね!では田島さんはいかがでしょうか?」
田島「“お前次第だぞ!”って、ちょっと乱暴かもしれないですけど、本当そんな感じじゃないかな。今まで日本で頼っていたようなサービスや公共システムがないと騒いだって何も変わらないじゃないですか。だから全部自分次第なんです。
何度かお話にも出ていますが、本当に自由だし、でも責任も自分にのしかかってくるんです。海外に出るというのは少なくともそういうことだと理解しておく必要はありますね。」
岩辺「環境の方からはそんな簡単に変わっていかないですからね。そういう違いを楽しむということも一つポイントですね。」
田島「特に周りに日本人がいない状況だと際立ちますね。ワクワクするんですよ。人がまだしていないことをすることって。ただ誰もしていないからこそ、そこには絶対苦難もあります。そういうことを覚悟して来るべきだとは思いますね。
おそらくそういった決断の際に、周りが反対しているとか、結婚や老後と将来が不安という気持ちもあるかと思います。何度も言いますが、それもやっぱり“お前次第だろ?”と。覚悟を持ってくれば絶対楽しいですし、それだけは言いたいですね。」
岩辺「アツいお言葉ありがとうございました。責任もひっくるめて覚悟ごと楽しむぞ、と。では最後、西澤さんお願いします。」
西澤「今の田島さんの言葉と少し重なるかと思いますが、“違いを自覚する”ということが海外生活を楽しむコツだと思っています。というのも、果たして日本での生活が本当に快適だったかというとぼくは結構疑問に思っています。電車が定時きっちりの来るのはもちろん素晴らしいですけど、こっちにいると待つことが当たり前になるので時間の概念が変わってきましたね。そんな中で、日本にいると許せなかったことが許せることも結構あるんですよ。
なんでかな?って考えたときに、あまり多くのことを求めすぎるのをやめた方が良いかもしれないなって思ったんです。あったかいシャワーが世界中どこでも浴びられるというのが幻想だって受け入れられるんです。
なんだか消極的かもしれませんが笑。とにかくゼロになって来てほしいと思います。先入観や既存の価値観に当てはめるんじゃなくて、今それを見ている瞬間、その目で判断してほしいですね。」
岩辺「今にフォーカスして目の前の世界と向き合うマインドというのはアジアをはじめ海外で生きる上で非常に大切な心得になりそうです。」
日本人が大切にする“和”の本当の意味
西澤「なんか実はぼく、“楽しまなきゃ”っていう感覚自体久しく忘れちゃってるんですよね笑。」
岩辺「それだけ自然体ってことなんじゃないでしょうか?」
西澤「そうですね笑。」
田島「孝さんのお話にあった“さらけ出す”って部分。ぼくバギオに来て八方美人じゃなくなったんですよ。」
西澤「それはわかる。ぼくも最初結構イエスマンだったからなあ。」
田島「そうそう。最初は誰に対してもすごく良い顔してたんですけど、そういうのが一切なくなりましたね。何かを追及していると、言わなきゃいけない場面っていうのが出てくるんですね。絶対職場で何かしらの衝突はあるので。」
西澤「折れない部分ですよね。」
金子「“さらけ出す”といえば、孝さんも田島さんもバギオに来てからクラブに行ってガンガン踊るようになったんですよね?」
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一同 笑
金子「そういう潜在意識をさらけ出せる場所なのかもしれませんね、バギオって。」
光本「自分を出す。日本人にとって苦手とされるコミュニケーションの形かもしれないですね、これ。思ってることはたくさんあるんでしょうけどどうも出せない。でも海外でこうして働いたり、生活することで一つ自分の立場は明確にできますよね。」
西澤「うんうん。もしくは“日本人を守る”という意識もどこかで出てくるんじゃないでしょうか。」
岩辺「日本人を守る?」
西澤「はい。どうしてもバギオをはじめフィリピンの語学学校って韓国系が多いじゃないですか。そうすると運営的にも仕事感覚的にも合わない部分が出てくるんです。」
岩辺「例えばどんな性質があるんでしょうか?」
西澤「いわゆる事なかれ主義です。なのでぼく校長と一回大喧嘩をしていて笑。」
岩辺「昔はイエスマンだったとおっしゃっていましたね。」
西澤「はい。あるとき“それじゃいかんだろ”と思って。でもそれからすごく仲良くなったんです。なんでも言い合える仲になりました。」
田島「ぼくもまさにそんな感じです。今では自分の意見はしっかり提示しますね。」
岩辺「なるほど。」
西澤「一回そうやってやり合った人には必ず何か芯があると思います笑。頑固になるというか。
日本人の感覚で言うと“和”を大事にとよく言われます。それって本当は、相手のために何も言わないということじゃなくて、相手が気づいていないかもしれないことをちゃんと言ってあげることなんです。
むしろ思っていることを言わなかったことで、会社や組織に対して“自分は何も貢献できていないんじゃないか”ということに危機感を持った方がいいんじゃないかなと思っています。」
岩辺「自身の存在感の確認にもなりますよね。そういった意味で言えば、自分を出すということがそのまま自分を知る、認めることにもつながって、それが最終的に喜びになるんじゃないかなとお話を聞いていて思いました。
みなさん今回はご協力いただき、どうもありがとうございました!」
一同「ありがとうございました〜!」
対談のまとめ
海外での生活を楽しむために欠かせない心得として、皆が口を揃えて解答したのが「自分をさらけ出す」ということ。
自由な世界に飛び出して、反面そこに伴う責任と向き合いながら自分を打ち出していくこと。それによって日本では見えにくい自身の存在感や喜びを得られるのではないでしょうか。
波乱の毎日を楽しむ過程で自分を好きになる。そうやって考える日々は楽しい。
最後に
フィリピンで出会ってきた多くの日本人は決してスーパーマンではありませんでした。いわゆるフツウの人。苦しんで、悩んで、弱くて。それでも進もうと、次のステージを目指す人。
すべての人が海外に出るべきだなんてまったく思っていませんし、今いる場所に信念を貫けるのであれば、そのまま進んだらいいでしょう。でも「もしかしたら…」と悩むなら、気づいてほしい。
どうせ、わかっていることなんて「わからない」ということだけ。責任持って自由を楽しむ覚悟があるなら、あとはやるかやらないか。それだけです。
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なんで裸なんですか?
“自分をさらけ出す”ことをどう表現できるかと考えた末のアクションです。
撮影地:バーハム公園(Burnham Park)/バギオ