英語学習における音読の重要性をご存知でしょうか。
ドイツの考古学者であり実業家でもあるハインリッヒ・シュリーマンは複数言語をマスターしておりました。彼いわく、音読は外国語習得における伝統的な方法であり、彼自身も複数言語をマスターするために音読を行っていたと自伝の中で明かしています。最近では音読の重要性が日本へも広まり、英語上達完全マップの著者である森沢洋介さんをはじめ、複数の英語学習指導者が音読の重要性を謳っています。
しかし、今の音読ブームへ危惧している声もあります。
なぜなら、音読ブームに乗っかってむやみやたらに読むだけで英語が上達すると勘違いしている人が多いためです。
冷静に考えてみれば当たり前のことです。
例えばアラビア語をイメージしてみてください。あなたはアラビア語を習得しようとしています。その際に、ひたすら毎日アラビア語を音読して上達すると思いますか?
アラビア語の音読を幼少期に行っていたのなら多少の効果はあるかもしれません。しかし、ある程度の年齢に達してしまっている場合には効果が薄いことは容易に想像できるかと思います。
参考:英語学習における臨界期仮説とは
英語学習効果を高める『正しい音読』の方法論とは
むやみやたらに音読をしても英語学習効果はありません。では、どうすれば良いか?その回答は『ただしい音読の方法論を学び、自分にあった教材を使う』ことです。
英語学習効果を高める『正しい音読の方法』とは
東進ビジネススクール講師である安河内 哲也さんが提唱する方法を抜粋してご紹介します。
1.構造の理解と単語・フレーズの暗記を先行
構造も単語やフレーズの意味もわかっていない文をむやみに棒暗記しても意味はない。まずは文構造と単語やフレーズの暗記を先行すること。
2.リピーティング
音読の最初の段階で、正しい発音を学ぶことが重要。そのためにネイティブスピーカーの音声モデルを、センスグループやセンテンスの単位でリピートし、正しい発音を覚えることが重要。
3.Read & Look up
センスグループやセンテンスごとに一度音読したものを暗唱して発話する。文構造を意識して正しい英語をアウトプットする訓練にもなる。これは、アウトプットにも大変効果がある学習法だが、発音模範をネイティブ素材なり教師なりが示さないと、デタラメな発音が定着する危険性もある。
4.音読筆写
Read & Look up を、手を使ってやる方法。センスグループごとに音読しながら暗唱して書き写す。Read & Look upに加えてスペリングにも注意が必要。
5.加速トレーニング
とにかく速く読む訓練をする。言語を習得するためには、スピードを上げることが不可欠。たとえば、同じセンテンスを10回繰り返して速く読むことなどがあげられる。
6.オーバーラッピング
テキストを見ながら、音声と一緒に読む音読。目と耳と口を同時に使うことで反射神経を高める。棒読みにならないように、意味を考えながら読むことが重要。この点では、歌をおぼえることと言語を学ぶことはよく似ている。ただし、歌と多少違う点は、文章の意味に最大の注意を払う必要があるということだ。
7.シャドーイング
英語音声を聞きつつ、聞き取った英語を紙に書く方法。高いレベルのリスニング力を身に付け、発音とイントネーションを矯正するためのたいへん優れた方法です。もともとは、同時通訳の訓練だが、その効果に注目が集まり、一時ブームにもなった。しかし、初学者はリスニングと発話に集中するあまり、意味理解がおろそかになってしまうというデメリットがある。また、初学者には敷居が高すぎるかもしれない。リスニング力・発音力の改善のために、上級者はトレーニングに組み入れるとよい。
まずは上述した方法論を理解しましょう。
分からない部分があれば、その単語の意味を調べてみてください。
どれも有名な方法なので、詳細に解説されているサイトは数多くあります。
音読の方法論が理解できたら、参考書を使って実際にインプット・アウトプットをしていきましょう。参考書はTOEICのスコア別に分けてあります。あなたのTOEICのスコアに合った参考書、もしくは興味の湧く参考書(興味のない参考書を買い、すぐに飽きてしまっても意味が無いため)を手にとってみてください。
英語学習の音読におすすめな英語教材10選
以下がTOEICのスコア別に分けたおすすめ教材となります。じっくりご覧ください。
1. 速読英単語
TOEIC300点未満の方向け
大学受験用の参考書ですが、入門書には分かりやすい短い英文が書かれており勉強が捗ります。もともと英単語を覚えるための教材なのですが、文脈から英語を覚えることをコンセプトにしており、CDも販売されているので、CDと一緒に音読の練習をすることをおすすめします。扱っている英文は実践的な英会話ではなく、読みやすい物語や記事ですが、英語初心者の音読練習にも利用できます。自分の基礎的英語力を上げることができ、丁寧に繰り返し覚えていけば、英単語力も身に付けることができます。
2. はじめてのウィスパリング同時通訳
TOEIC300点未満の方向け
付属のCDで音声を聞いて、すぐに音読をする。文節ごとに区切っていきどんどん音読していく。ウィスパリングのやり方を丁寧に書いたものがはじめてのウィスパリング同時通訳です。同時通訳と聞くと、特別な音読のように感じますが、一般の人が会話を聞いてすぐに反応するためには、こちらの本で紹介されているトレーニングが有効です。扱っている文章の意味が分からなくても、丁寧に文節で切って、訳されていますからご心配いりません。そういった意味でTOEICのレベルはあまり関係ないです。
3. 英会話・ぜったい・音読 入門編
TOEIC300点未満の方向け
同時通訳の神様として知られている国広正雄氏によって書かれた本です。3か月のトレーニングプログラムに使われる12レッスンの英文は中学1〜2年生用の英語の教科書から選択されたものなので、初級者にも取っ付き易い内容となっています。トレーニングは1日1レッスンずつ英語を聞き、何度も音読をするといういたってシンプルな勉強法です。3か月粘り強く続けると、地道に繰り返し取り組むことが何より大切と実感させられる、そんな教材です。
4. どんどん話すための瞬間英作文トレーニング
TOEIC300点以上の方向け
定番教材です。中学生レベルの簡単な英文を繰り返し音読しつつ暗記していきます。英語上達完全マップの著者である森沢洋介さんが日本に広めた英語学習方法です。考えてみれば当たり前のことですが、英語を話すときに話したい内容を『日本語から英語』に翻訳をしていたら会話のスピードについていけません。瞬間英作文トレーニングを繰り返すことで、反射的に英語を話せるようになります。
5. みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
TOEIC300点以上の方向け
自分で英語を聞き声に出すことで、英語体質を作るために音読トレーニングをパッケージ化した本になっています。本は見開き1ページで左側は英文、右側に和訳が載っているというシンプルな構成です。音読することによって、学習で得た知識を使えるスキルに変換していくことを目的としています。最終的にはテキストを見ないで完璧にリピーティングできるようになることが本書の目標です。難解な英単語はほとんど使われていないので、英語初級者が使っても対応できる内容になっています。
6. アメリカ口語教本・入門用
TOEIC300点以上の方向け
シリーズ累計500万部を超える大ロングセラーの本です。アメリカで実際に使われいてる会話表現が載っており、それらを習得することが目的です。文章が多少古い感じがする例文もありますが、品のある英語を学べるため、公の場で発言するような人に向いている教材です。添付CDのナレーションは遅めですが、きちんと聞いてきれいな発音でしゃべれるようになることが目的のため、このスピードで練習することが大切です。シャドウイングやディクテーションの練習にも向いています。
7. CD付 英文スピードリーディング 初級編
TOEIC500点以上の方向け
目と耳から速読力を鍛えます。理論だけでなく実際の訓練方法も記載されているので学習しやすい内容になっており、英語の手順の基本である戻らず読み進む読み方が身に付きます。文節ごとに区切って発音してくれるCDがついているので、真似するだけで息継ぎのタイミングや意味の取り方の感覚が身に付きます。英文速読について理論的に書かれた本はあまり無いため、実際に英文速読の訓練をしたことがない音読の初心者の方には特に参考になる内容になっています。
8. 実践ゼミ ウィスパリング同時通訳
TOEIC500点以上の方向け
実際に通訳する英会話を題材にしており、実践的な音読教材として利用できます。発音を聞き取るためのアドバイスなども丁寧で分かりやすいです。同時通訳を目指す人向けに書かれている本ですが、そうではない人にも参考になる内容となっています。実際、TOEICのテキストや学校の教科書のような会話や発音をする人は少なく、発音に個性がありスピードも速かったりしますから、本書を使って実践に近い英語を学ぶと良いでしょう。
9. ALL IN ONE
TOEIC500点以上の方向け
文法、単語、熟語、読解、リスニングがすべて同時学習できることが特徴です。CD約70分の例文は覚える価値のある自然な英文になっており、1センテンスの長さも統一されているのでテンポよく覚えることができます。全ての例題を聞いて理解できるようになることが最終目標としましょう。本を使ってみた読者からの質問は英語 ALL IN ONE に関する質問と回答に掲載されており、購入者へのサポートが手厚くなっていることもこの本の特徴のひとつとなっています。
CNN english express(雑誌)
TOEIC500点以上の方向け
ビジネスの場面を意識した教材で、音読の練習指南が丁寧に掲載されています。一般の方やビジネス場面を意識した文章が多く、内容も様々なニュースが扱ってあるので飽きずに楽しく英語学習できます。この教材は、リアルタイムなニュースが多いので、次号は何が書いているのだろう、と毎回楽しみになり、脱落しづらいかもしれません。
以上となります。
記事が参考になれば幸いです。