神谷「こんにちわ。桑原さん、本日はインタビューを受けてくださり誠にありがとうございます。」
桑原「カタいなぁ~、俺と神谷ちゃんの仲じゃない、気楽にいこうよ!」
神谷「そうっすか?じゃあいつものノリでインタビューしていこっかな。」
※筆者と桑原さんは旧知の間柄です。インタビューを進める前に、彼の経歴をざっくりと紹介します。
桑原功一さんってどんな人?
2012年、桑原さんの作った動画『日本人が韓国でフリーハグをしてみた』がSNS上で注目を集める。動画投稿サイトYouTubeでは再生数1,000,000回を超え、フリーハグ・アクティビストとして一躍有名人に。その後も2013年に北京、2014年に南京など、東アジアを中心に単身でフリーハグ活動を続けています。
近年では東京大学や龍谷大学で講演をするなど、自身の活動の周知、普及も熱心に行っている桑原さんが、2017年のフリーハグの舞台に選んだのが東南アジア。2月から旅をはじめ、タイ、台湾での活動を経て、現在フィリピンはバギオに滞在しています。
フリーハグをはじめた動機とキッカケ
神谷「ではまず最初の質問の前に、その腕どうしたんですか?」
桑原「これ?いいでしょ?バギオの公園でヘナタトゥー入れてもらったの。600ペソ(1350円)だった。」
神谷「マジックで落書きしたようなチープなクオリティですね。俺でも書けそう。とりあえず、外で会ったときは話しかけないで下さいね。」
桑原「これ神谷ちゃんがやれっていったんだろ笑!」
神谷「そうだったけ?笑 まあいいや、インタビューはじめましょ。フリーハグ活動を始めることになったキッカケを教えてもらえますか?」
桑原「相変わらずテキトーだなぁ・・・。えーっと、その質問は必ず聞かれるんだけど、まずはこの動画を見てもらえるかな?」
桑原「おっさんがいろんな場所で踊るっていうシンプルな動画。これが世界中の人たちの心を掴んで今では動画の再生数が500,000,000回を超えてるの。難しい動きなんて一切していない。誰でもできる。でもこのアイディアを思いついたのは彼だったんだよ。“すごいっ!”って感じたと同時に、“俺にもできるかもしれない!”って思った。
アイディアさえあれば人の心を動かすことができるって。
その後、2011年に『日本人が韓国でフリーハグをしてみた』の動画をYouTubeにアップしたんだけど、当初はそんなに反響はなかったんだよね。で、じゃあ次は別のことをしようってことで、中国の西安からイタリアのローマまでシルクロードを自転車で旅をするっていう活動をはじめたんだ。」
神谷「その途中で会ったんですよね。あれはグルジアだっけ?」
桑原「そうそう。ホテルの名前覚えてる?“ホステル・ロマンチック”、全然ロマンチックじゃなかったけど。」
神谷「覚えてる覚えてる。初対面で、“どうもー!クワマンです、ヨロシクね~”って言ってきて、やたら馴れ馴れしくて絡みにくかった。」
桑原「そうだっけ笑?俺も若かったからね!で、そのシルクロードの旅は9ヶ月くらいかかって、旅をしながらちょくちょく動画を投稿してたんだけど、やっぱり注目されない。売れない芸人みたいな沈んだ気持で日本に帰ったらロンドン五輪がはじまっててさ、そんなとき、日韓関係が突然悪化したんだ。竹島を巡ってテレビやネットですごい騒ぎ。そしたらFacebookとかtwitterで、あの『日本人が韓国でフリーハグをしてみた』の動画が注目されだして、あれよあれよという間に500,000再生を超えていったの。」
神谷「それがキッカケで有名になっていったと。」
桑原「そう。自分の起こしたアクションがたくさんの人に感動を与えることができた。自分がやりたかったことがひとつ実現できた。そして考えてみれば韓国だけじゃなく中国との関係もあまり良くはない。じゃあ中国でもやってみようってことで、北京や南京でフリーハグをしようと思った。」
神谷「それ、怖くなかったんですか?」
桑原「まったく怖くなかったかというと嘘になるよ。けど、きっと大丈夫だろうと思ってた。これはただの楽観ではなくて、経験からくる自信。さっき話したシルクロードの自転車旅をする前に、西安で大学に通って中国語を勉強してたんだよね。旅で必要になると思ったから。そのとき出会った中国人の学生とか、旅先で出会った現地の人たちに本当に優しくしてもらったんだ。日本のメディアにでてくることのない、“普通”の中国人。一般的には地方のほうが反日感情が強いといわれているけど、そんなイメージは中国を旅することで覆された。
あの親切で温かい人達がフリーハグをする俺を傷つけるとは思えなかったんだ。
韓国でのフリーハグだって、10年前にバギオのPINESで英語留学をしたときに韓国人とすごく仲良くなれたからっていうのが大きい。あの経験がなければ韓国でフリーハグをするなんていう発想も出てこなかったと思う。俺が海外っていうフィールドで活動をしているのは、フィリピン留学がひとつの大きなキッカケになってるんだ。
いまでは韓国、中国だけじゃなくて他の国でフリーハグしたり、“フリーハグをしてみたいです!”っていう若い人たちのお手伝いをしたり、プロデュースみたいなこともしてるよ。そうやっていろんな形で続けていくうちにいつの間にかフリーハグがライフワークのようなものになっていったんだよね。」
※今回、桑原さんにはPINESのカムバックスチューデントとして、一週間の体験留学をしていただいています。
フリーハグでお金は稼げるのか!?
神谷「なるほどなるほど。個人的にもはじめて聞いた話が多くて面白かったです。さて、一通り真面目な質問はしたので、ちょっと突っ込んだことを聞いていきたいんですけど、ぶっちゃけお金ってどうしてるんですか?フリーハグしてもお金はもらえないだろうし。」
桑原「イタいところをついてくるね。お金ね、ないんですよ。マジで。例えば東大で講演すると数万円ほど謝礼はもらえたりするんだけど、それじゃあ食っていけない。そもそも海外でフリーハグするための渡航費にすらならないの。」
神谷「今、東大で講演したってとこアピったでしょ。」
桑原「バレた笑?でさ、じゃあどうやって資金を作るかっていうとリゾバですよ。」
神谷「リゾバ?」
桑原「リゾートバイト。俺の場合は温泉旅館に泊まり込みで働くんだけど、だいたい一ヶ月に10万円くらい貯められるかな。働く期間はそのときによって違うんだけど、2016年は働きながら2泊3日の休みをとって韓国にフリーハグしに行ったりもしたよ。」
神谷「へ~、けっこう稼いでる!あと、あれやってたよね。クラウドファンディング。成功したんだっけ?」
桑原「2015年にやったやつね。あのときは中国、韓国、台湾、香港と東アジアをまわってフリーハグをするための支援をお願いしたんだけど、おかげ様で成功しましたよ!約60万円を支援していただきました。」
神谷「60万!!すごい、ボロ儲けじゃないっすか。」
桑原「と思うでしょ?でも俺の使ったReady Forっていうクラウドファンディングサイトは集まった金額の17%を手数料として引かれるからそれで50万円くらいになって、支援者へのリターンに使うお土産代と送料などなど、最終的にフリーハグの経費に使えたのは半分の30万円くらい。
もちろん、30万円っていうお金は俺にとって大きな額だし、本当に大きな助けになったよ。」
神谷「いずれにしても、お金が目的だったらフリーハグ活動なんて続けられないですよね。そして、そういう桑原さんのスタンスが人の共感を生むのかもしれない。」
桑原「お、今回はじめて褒めてくれたね!」
フリーハグ・アクティビスト桑原功一さんにとってのバギオとは?
神谷「ちなみに今回フリーハグをする場所として、どうして東南アジア(フィリピン)を選んだんでしょうか?日韓、日中関係と比較するとかなり良好な状態だと思うんですが。」
桑原「日比関係が悪くないのはもちろんわかってるよ。日本はフィリピンに対して経済的にたくさんの援助をしているし、フィリピン人も親日の方が多い。だけど、実際に日本人がフィリピンに抱く印象ってどうだろう?“治安が悪そう”“貧困”“セブ島は行ってみたいけど、他は知らない”と、こんな感じじゃないかな?
いわゆる思い込み、刷り込みからくるステレオタイプ。そして、ぼくのフリーハグ活動の趣旨のひとつは、ステレオタイプを無くそう!ってところにある。
フィリピンの一部は確かに治安が悪いかもしれない。でもそれはあくまでも一部の話。バギオ・シティはピースフルな街だし、人もすごくフレンドリーでしょう?
この動画を見たことで、フィリピンに対してネガティブなイメージを持っていた人を変えることができたら、旅行してみたいとか、もっと言えば留学してみたいなとか。そんなことを思ってもらえたら今回のフリーハグ活動は大成功なんです。
フリーハグは、決して国家間の関係が悪いところだけでするためのものじゃない。考え方を変えればもっともっとポジティブな活動にしていけるはずだと思う。」
神谷「ZZZ zzz … あ、スイマセン話が長かったのでウトウトしてしまいました。たしかにフィリピン人の女の子ってカワイイですよね。」
桑原「そうだよね~、目もぱっちりしてるし俺のタイプ・・・っておいっ!ちゃんと聞けよ!さっきは褒めてくれたのに・・」
神谷「ゴメンゴメン笑。ところでフィリピンでのフリーハグってどうでした?他の国との違いとか感じましたか?」
桑原「フィリピン人というか、バギオの人ってシャイな人が多いじゃない?PINESの先生たちも自分たちは比較的シャイだって言ってたし。だからフリーハグする前はどんな反応をされるかドキドキしてたよ。だけど、実際にやってみたら心配する必要なかったね。みんなとってもフレンドリーだった。特徴的だったのは、みんな写真をとりたがること。ここだけの話、ハグよりも写真を撮りたくて近づいてくる人のが多かった笑。」
神谷「フィリピンって世界で7番目にフェイスブックのユーザーが多いらしいですからね。みんなSNSに投稿したいんでしょう。女性は特にSNS上のセルフィー投稿率がすんごい高いよ。どんだけ自分好きなんだよって思うもん。」
桑原「みんながシェアしまくってジャスティン・ビーバーに届かないかな?」
神谷「では最後の質問です。桑原さんはもう6年以上もフリーハグを続けていますよね、そのモチベーションはどこからくるんでしょうか?さっきのお金の話をしましたけど、フリーハグのために自分の生活をけっこう犠牲にしているような印象を受けます。」
桑原「はじめてフリーハグをしたのが2011年。どうして続けているかというと、何度も言っているように人を感動させることのできる人間になりたいから。それに俺がやってる活動はフリーハグだけじゃないよ。フリーハグ以外ぜんぜん注目されてないけど笑。いまは“桑原功一=フリーハグ”になってるけど、もっとマルチな活動をしていきたいんだ。そのために頑張ることは犠牲とは思わない、好きでやっていることだから。普通に日本で仕事をしている人とは生き方が違うけどね。」
神谷「他の活動も注目されるといいですね!個人的にはス〇ッ〇でフ〇マ〇〇ンする企画とか面白いと思うんだけど、、これはまだナイショですよね笑?」
桑原「ナイショだよ!!ギネス申請してるんだからバラしちゃダメー!!」
神谷「伏せ字にしときます。ちなみに今後の予定はどうなっているんですか?」
桑原「まずはマニラに戻って、セブ島に飛びます。その後にシンガポール、マレーシアでフリーハグをして、その後は・・・ナイショ!今、日本と政治的に問題が起きているあの場所です。とにかく、これからも動画を作ってたくさんの人にみてもらいたい。そして何か思いを巡らせたり、行動を起こしてもらえるような、文字通り人を“感動”させる人間になりたいです!フィルポータルさんでもガンガン宣伝してくださいねー!」
神谷「ありがとうございました。以上でインタビューは終わります。さすが変人だけあって、面白いお話がたくさん聞けました。腕の落書き、早く消えるといいですね。」
編集後記:ただまっすぐに。フリーハグで感動を
フリーハガーとして有名な桑原さん。その実態は、実はただの冒険好きで人好きのする青年でした。フリーハグを行う彼の芯にあるものは「人を感動させる人間でありたい」というシンプルなもの。この現代社会において、信念にまっすぐであることはときに簡単ではありません。いろいろな理由で、たいせつな信念を現実にすり寄せていく。…だけど、それでも!と思う人達が、彼の行動になにかを感じるのかもしれません。
桑原さんには当校PINESのオフィシャルブログでも記事を書いてもらっていますので、興味のある方は以下へ。