近年フィリピンが留学先としてメジャーな存在となった。フィリピンへ留学して英語を学ぶ人が増えるにつれて、その中からアジア就職を志す人も出てきている。
私自身も2006年からバンコクへタイ語留学をした後に、フィリピン留学のリピーターとなり、その語学力を武器に2017年までタイ企業でたったひとりの日本人社員として勤務していたアジア就職者だ。今ほどメジャーとなる前のフィリピン留学を経てアジア就職をした者として、アジア就職を目指す人に役立つ情報を発信しようと、フィルポータルにライターとして参加した。日々、自身のブログや他のメディアでも寄稿を行っている。
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【経験者は語る】アジア就職が熱い!英語武装して海外で稼げ!!
フィリピン留学から海外就職への鉄則!①(全10話)
アジア就職はおいしい、だけど良いことばかりでもない!
先述した通りフィリピン留学後の進路としてアジア就職が注目されるようになっているので、経験者の視点で深く掘り下げてみる。まず、最初に言っておきたいのは・・・アジア就職はおいしい。
かなりおいしい。
生まれ変わってもアジア就職するかと聞かれれば、YESと答えるぐらいだ。しかし、最近は多くの企業や語学学校が集客のツールとして海外就職・アジア就職を煽る傾向があり、あまり一方的にポジティブなことばかり宣伝するのは、よくないとも思う。
そこで初回の今回は、あえてアジア就職のネガティブな面を取り上げる。アジア就職は決してバラ色ではなく、苦労することもあるし、日本では起こり得ないような事件に巻き込まれる危険もあるのだ。
フィリピン留学後、就職したタイで2015年に起きた大事件とは・・・
大事件の予兆
それは2015年のこと。当時勤務していたタイ企業の取引先で打合せを行い、それから次の訪問先に向かっている時だった。高速道路を運転している運転手の様子が明らかにいつもと違う。
蛇行運転を繰り返し、他車からクラクションを鳴らされて後部座席の私も危険を感じ
『オイ!まっすぐ運転しろ!』
基本的に声を荒げないようにいつも気を付けてはいたが、さすがに生命の危険もあるのでいつもより強く運転手を叱った。
それでも何の効果もなく、ヒヤヒヤしながら何とかバンコクの中心部にある次の訪問先に到着した。そこには、私のボスであるタイ人社長も来ていた。
『運転手の様子が明らかにいつもと違うんだけど・・・』
そう私が社長に言うも、あまり関心を示さずスルー。その日は大きな商談だったので無理もなかった。
そして衝撃的な事件は起きた。
打合せが終わると、いつものように電話で運転手を呼び出す。が、出ない。何度掛けても出ない。イライラしていると、社長は自らボルボのハンドルを握り去ってゆく。仕方なくビルの駐車場の中を歩き回って車を探すと、ようやく自分の車が停車しているのを発見。中を覗き込むと、運転手は爆睡中。呆れて車のドアを開けて大声で起こす。
『起きろ!帰るぞ!』
しかし、彼の反応は鈍かった。明らかにいつもと様子が違う。
『オイ!車のカギはどこだ?』
その問いに対する彼の反応は・・・
『それは財布!オレが言ってるのは車のキーだ!』
『そうそう、このサングラスを鍵穴に差し込んだらエンジンがかかって・・・差し込めるか、ボケ!』
関西人なのでとりあえずノリツッコミをしておいた。しかし、運転手の額からもの凄い汗が流れ、意識も朦朧としていた。まともな意思の疎通はできそうにない。この時点で私はもう薄々感づいていた。その後の行動は早かった。
『すぐ警察を呼んでくれ!』
呼んできた警備員に指示を出し、会社の人事にも電話で報告した。金曜日の夕方なので警察が来るまでしばらく待った。ようやく到着した彼らの最初の第一声は
『どうして病院へ連れて行かない?』
内心では、貴様らの目は節穴か!そう言ってやりたい気持ちだったが、相手は警察。怒らせない方がいいので丁重に事情説明した。すると、警察官も徐々に状況を理解し始め、車の中を調べ始める。
その時の動画がこれだ!薄暗いビルの駐車場で慌てて撮影したので、上下が逆さま。
車の中や運転手のカバンを調べた後、運転手のポケットの中を調べようとすると意識朦朧の運転手が抵抗したのだろうか、警察官は即取り押さえて、後ろ手に手錠をはめた。
『トンロー警察まで連行するから一緒に来い!』
そう言われて後部座席に乗せられ、警察官が自らハンドルを握った。私は後部座席の左側、右側には手錠をはめられた運転手という摩訶不思議なドライブだった。
その頃、会社は大パニックだったようで、私の身が相当ヤバイ状況になりかねないと、タイ人社長は何とか救い出せと大号令をかけていたらしい。但し、肝心の本人は全く能天気だったのだが。
事件の結末
警察署に着くと、私の運転手はタイーホされてしまった。聞いたところによると、懲役5年になったそうだ。彼のポケットから容疑を決定づけるブツも見つかったし、検査でもクロだった。
そのタイーホされた時の写真はこれ。
まだこの時も爆睡中。もう勘の鋭い皆さま方のことだから、何の罪状でタイーホされたかはお察しでしょう。彼のポケットから出てきたのはヤーバー(ยาบ้า)。タイ語でヤーはクスリで、バーは馬鹿。馬鹿になる薬ということ。具体的には、アンフェタミン系の覚せい剤の一種。
この運転手が不運だったのは、主人が私だったこと。普通の日本人だったら、アタフタしてどうしていいかわからない状況になっていただろう。だが、私は早い段階でヤーバーの使用に感づいて、迷うことなく直ちに警察に差し出すという行動に出た。しかも、病院へ連れていけという警察官に、『いや、この運転手は絶対にヤーバーやってるぞ!』そのようにタイ語で全部説明して、逮捕までさせてしまった。
さて、私の身に危険が及ぶとタイ人社長は相当心配したらしいが、幸いなことに何の問題もなかった。同じ車に同乗している人間なので、警察から容疑者扱いされたり、厳しい取り調べを受けたり、最悪は容疑をでっちあげられたりということを心配していたようだ。
タイ人社長によると、ジャパニーズビジネスマンだということで、警察も一定の敬意を払って対応してくれたのだろうと。だが、これが地方都市の警察だったらマジでヤバかったかもと言っていた。これが途上国の現実。
まとめ
フィリピン留学後にアジア就職して働いていたら・・・タイで運転手がタイーホされるというとんでもない大事件に巻き込まれてしまった。たまたま運が良くて何もなかったが、一歩間違えば大変なことになりかねなかった。アジア就職は非常に魅力的であるのは間違いないが、途上国で働くと日本ではあり得ないような事件に巻き込まれかねないというリスクもあるのだ。
それでも、こんな事件に巻き込まれたのは私ぐらいで、ほとんどの日本人は普通に暮らしている。だから、そんなに不安がることもないのだが、日本で暮らすのとはわけが違うという意識は持っておいた方がいい。
フィリピン留学を経験してからのアジア就職す皆さんは、就職するまでにフィリピンでたっぷり途上国とは一体如何なるものなのかをしっかり理解し、それでも就職したいかどうかを自問自答するべきだろう。
フィリピン留学とアジア就職を経験した者として言えるのは、それでもアジア就職は素晴らしいということ。日本では経験できないことをたっぷり経験することができたし、大きく成長できたと思っている。私自身の結論としては、アジア就職して大正解であった。