セブ島では酷暑に加えて断水が続いています。そんな厳しい日々ですが今フィリピンではあることに人々が熱狂しています。それは大統領選挙です。
来る2016年5月9日に国内の公立学校の校舎などを開放して投票が行われます。いよいよ迫った投票日を前に直前速報を実施すべく街中の人々に誰を支持するのか尋ねてきました。
「外国の大統領選挙なんて…」
まあそう言わずに。もう少しだけお付き合いいただきたいです。
なんでって?それは今回のフィリピンの大統領選挙がとにかくオモシロイからです。まずは各候補者の紹介からしていきます。
大統領有力候補者まとめ
1. グレース・ポー上院議員(47) Grace Poe
生まれて間もなく教会に捨てられて保護されます。5歳の頃そんな彼女を養女に引き取ったのは当時フィリピン映画界の大スターだったフェルナンド・ポー・ジュニア氏夫妻。
その後国立フィリピン大学を卒業してボストン大学へ留学し、その後はアメリカで生活。2004年に政界に進出していた養父が大統領選挙に出馬するため帰国して選挙活動を手伝うも僅差で敗北します。その際当選したアロヨ氏陣営が不正操作をした疑いが強く、その後養父も急死。
父の遺志を引き継ぐべくグレース氏も活動拠点をフィリピンに戻し、政界に参入。2013年より上院議員を務めます。
大統領選への最大の障害となっていた立候補資格(※長年アメリカで生活していてフィリピン国内の居住期間が基準に達していないため)を得られ、いよいよ世界最高のシンデレラストーリーはクライマックスを迎えるのでしょうか。
2. ジェジョマル・ビナイ副大統領(73)Jejomar C. Binay
各界で実績を積み重ねて残す最後の一段。大統領の最右翼
国立フィリピン大学法学部を卒業。その後司法試験に合格し人権弁護士として民主化運動に参加した後にマカティ市長を務めます。確かな成果を残して現在の副大統領に登りつめてきました。歴代大統領を務めてきた系譜アキノファミリーとの関係も良好。
鮮やかな経歴からは「エリート中のエリート」というイメージを持たれますが、実は貧困家庭の出身です。マカティ市をオフィス化・商業化させる一方で貧困層まで行き届いた政策を展開している所以はそこにあると思われます。そのため国民の大半を占める貧困層から強い支持を集めています。
強いリーダー像を人生をかけて確立してきました。絶大な人気で独走必至かと思われていましたが、マカティ市長時代に汚職の疑いがあることが発覚し、ここに来て最後の一歩に陰りが見えます。
3. マヌエル・ロハス前内務自治相(58) Mar Roxas
大統領を祖父に持つ生粋のエリート、軌道に乗る現大統領の施策を続行
現ベニグノ・アキノ大統領より直接指名を受けているのがロハス氏。歴代政権に比べて高い経済成長を記録している国の政策を継続する姿勢を見せています。現大統領を支持する層からの支持を集めています。
何としても彼を大統領の座に就かせたい政府側が味方であることで票は根強いとみられています。
4. ロドリゴ・ドゥテルテ・ダバオ市長(70) Rodrigo Roa Duterte
目的のためには手段を選ばない仕事人。超厳戒態勢で今度は国を改革
かつて「フィリピンの殺人都市」と呼ばれたダバオ市が今では「東南アジアで最も平和な都市」と言われています。犯罪発生率は劇的に減りました。
その実態は一人の男の活躍なしには語ることができません。その男こそドゥテルテ氏です。
ドゥテルテ氏は元検察官であり、その後は南部の中心都市ダバオで長年市長を務めます。犯罪を起こした者は問答無用に殺し、徹底的に悪の芽を踏み潰すという大胆でかつ挑発的な姿勢を貫いてきました。
アムネスティ・インターナショナルなど人権擁護団体からは非難されていますが、一方で「強くて厳格な指導者」としてフィリピン南部では圧倒的な支持を得ています。
各候補者の意向と下馬評
ニュースや新聞では4人の候補者がそれぞれ20%台の支持率を持つ4つ巴の展開と言われていています。
主役級のパーソナリティを備えた候補者たちによる選挙には前例のないほど注目度が高まっていて誰が当選しても全くおかしくない状況にあります。
掲げる方針の違いはそのまま国民の生活に反映されるため誰も放っておくわけにはいきません。
そんな中、日本経済新聞など日本メディアではポー氏がややリードしていると報じています。
政治経験こそ少ないものの、インパクトの強い生い立ちに加え、不正に敏感でクリーンな姿が人気を集めています。汚職の多いフィリピンでは政治経験が少ないことはむしろアドバンテージと言われているからです。イメージ先行な面もありますが、貧困対策・インフラ整備を謳い若年層、女性を中心に支持を得ています。
既成路線を継続させるロハス氏には一定の支持はあるものの抜きん出ることは難しいと思われます。
ポー氏、ロハス氏が現政権の政策を継続させる意向なのに対して以下ビナイ氏、ドゥテルテ氏は変革を目指します。
各地の貧困層から支持を集めるビナイ氏はあらゆる政策を刷新すると公約しています。南シナ海問題の対中政策ではこれまでの日米との連携から中国との対話路線に切り替えるとしており日本との関係性にも影響があると見られます。ただ汚職のイメージを払拭できるかが鍵となるでしょう。
そして最後にドゥテルテ氏は治安改善を約束しています。ダバオでの圧倒的な実績が説得力につながっています。ダークホースと見られていましたが、ここに来てポー氏と並んで最有力候補とされています。ロイター通信の最新世論調査ではトップだったという報道もされています。
街中で聞いてみた
実際にセブの街中のタクシー運転手、ショッピングモール内の店員や買い物客に誰を支持するのかを聞いてみました。
結果的には30人に聞いて19人がドゥテルテ氏と回答しました。ギャングを掃討し、国内に蔓延する銃器や麻薬を排除するという公約に期待しているとのことでした。
地域や職業によって大きく答えが変わるとは思いますが、セブ島にいるぼくの実感としてはドゥテルテ氏になりそうだなというのが正直なところです。
ドゥテルテ氏がフィリピン大統領に就任すれば取り締まりが厳格化して間違いなくフィリピンの空気は大きく変わるでしょう。
気になる選挙の動向とフィリピンの明日に一緒に立ち会いましょう。