フィリピンの首都マニラのあるルソン島北部に今回ご紹介するサガダはあります。世界遺産に登録されているバナウェのコーディリエラ棚田群への中継地点として訪れる人や、バックパッカーが滞在することが多いこの小さな集落。
日本人の数はそんなに多くありませんが、開発が進んでしまって観光業や多くの外国人で賑わう他の地域よりも先住民族の文化が変わらず継承されていたり、手つかずの原風景が残っていたりと実は旅の主役になりえる魅力がある場所です。
山岳地帯の奥地にある秘境
サガダはルソン島有数の都市でありフィリピン人の避暑地や外国人の語学留学の地として有名なバギオから、約100キロメートル北上したところにある標高1500メートルの山あいの集落です。
バギオからサガダへ行く場合、交通手段はバス移動のみ。マニラ、バギオ間を走るバスが発着するターミナルとは異なる場所にあるDangwa Terminal(ダンワ・バスターミナル)から「GL Trans」という会社のバスが1日に数本出ています。
今なお大切に受け継がれる伝統
サガダでは、脈々と受け継がれてきた文化の一端に触れることができます。写真は毎年11月ごろに行われるブグナスという豊作を祈願する行事で、3日間に渡って行われます。伝統衣装をまとった部族の男たちが高台にある1本の木を目指して集落を練り歩いた後、広場に集まって女たちが用意した酒や食べ物を受け取り、全員で太鼓の音に合わせて踊るというものです。
もちろん見学可能ですが、誰かにみせるためではではなく地域の人の繋がりや伝統を守るために続けられてきたものというだけあって、独特な雰囲気が漂います。このほかにも時期に限らず集落のいたるところで、人々の伝統の暮らしぶりを感じられるのがここサガダの最大の魅力です。
白骨が迎えてくれる洞窟探検
中心部から南に30分ほど歩いたところに、サガダケイブと呼ばれる洞窟があります。この土地で有名なハンギングコフィンの崖に死者を吊るして埋葬する風習が始まる前には、人々は洞窟に棺を置いていたそうで、入り口付近には大量に棺が置かれています。白骨が無造作に置かれている場所もあります。
洞窟内は日本でイメージする洞窟観光とは異なり、あかりもなく危険な箇所もあるところなので必ずガイドが必要となります。相場は300P(約700円)ガイドのランプの光を頼りに約3,4時間の冒険が体験できます。
洞窟と棺文化の街サガダ。いまいましい上司に連れていかれた結果
ルソン島山岳地帯の原風景と棚田
中心部から車で30分〜40分ほどのところに、山々の間から顔を出す朝日と棚田が一緒に見られる山があります。地元では有名な展望ポイントであるらしく、早朝には多くのフィリピン人が自家用車で頂上に登っていきます。頂上には屋台が出ており、コーヒーや軽食が楽しめます。
雄大な自然と眼下の棚田に垣間見える人々の営みに心を打たれます。私はこの場所が気に入ってしまい、朝日を見るために毎朝4時半に出発し歩いて通いました。本当に真っ暗で標高が高いので星がものすごく綺麗ですが、猿などの野生動物も出るので徒歩で登る際は十分注意してください。
断崖に吊るされた死者たち
サガダで最も有名な観光地であるEcho Valley(エコーバレー)にあるハンギングコフィン。これはサガダの少数民族イグロット族の2000年近く続いた埋葬方法で、彼らは死者をより天国へ近づけるために亡骸を断崖に吊るしました。死者への想いが具現化した独特の風習と、2000年近く続いた伝統にも終わりがあるという事実には感慨深いものがあります。
フィリピン人で賑わうBar:Artist Sanctuary Bar
最後に交流の場をご紹介。中心部にあるArtist Sanctuary Barという名前のBar。一本しかないメインロードをバスの発着場所から南に少し歩くと看板があり、その横の階段を登ったところにある民家のような外観のBarです。この地域でよく飲まれるジンやおなじみのサンミゲルが置いてあり、名前の通りアーティスティックな雰囲気が漂っています。店内の座席は無造作に置かれ、訪れた人が勝手に楽器を弾いていたり、店長が気まぐれで作った料理が勝手に出てきたりします笑。
外観は閉鎖的ですが中に入ってしまえば歓迎ムードが強いので、他の旅人と情報交換や友達になったりするにはもってこいです。私もマニラからきたバックパッカーや地元の若者たちと意気投合し、夜な夜なボブ・マーリーを歌いながら乾杯しました。
Artist Sanctuary Barの基本情報
英語名 | Artist Sanctuary Bar |
---|---|
住所 | South Rd, Sagada, 2619 Mountain Province |
営業時間 | 18:00~22:00 |
定休日 | なし |
電話番号 | 不明 |
WiFi環境 | なし |
公式サイト | Art Sanctuary Bar(Facebookページ) |
地域のオリジナル性と共同体に残る誇り
近代的な生活を取り入れながらも自分たちの誇りやアイデンティティーを地域で意識し、共有して今なお次の世代に受け継いでいるサガダ。小さな集落にも関わらず人が訪れ、愛してやまない理由がわかる気がしました。そして、なぜか懐かしい気持ちにもなりました。アクセスの面で大変なこともありますが、行く価値は絶対にあります。機会があれば是非、訪れてみてください。
バナウェの記事はこちら
【フィリピンバギオにある世界遺産】バナウェの魅力に迫る