今回はフィリピン留学を経てアジア就職した筆者が、実際に巻き込まれてしまった大事件を紹介する。フィリピン留学後にアジア就職という道を選択すると、発展途上国ゆえに起きてしまう悲惨なトラブル。その生々しすぎる実体験をお伝えし海外キャリア志向している人の参考になればと思う。
*緊急事態に加え、当時の携帯で撮影した写真たちのため画質は悪いです。
タイ語留学後の初めての海外就職で直面した現実
留学後の進路までよく考えて、フィリピンに留学する人がどれほどいるのかは知らない。とりあえず英語が話せたら将来にプラスだろう、という漠然とした人もいる一方で具体的な目標を持ってフィリピン留学に来る者もいる。私の場合は後者であった。2006年にタイ・バンコクに移り住み、現地のタイ語学校へ通い始めた。タイ語の読み書きまで習い、現地の日系企業に就職までして気付いたのが・・・
あれ?社内会議はタイ語ではなく英語で、メールも英語じゃないか。
ちょwwお前らwwオレはそんなにwww英語はww
一応、偏差値が60以上の大学を卒業したので英語の読み書きはそれなりに出来たが、会話になると…という感じだった。そんなこんなで思い切った行動に出でた。英語を勉強しておかないとヤバイという強い危機感がそうさせた。迷った時は前に進むという方針で生きているので、決断までの時間はあっという間であった。
そうしてやって来たのはフィリピン。英語を安く学べないか調べたら、フィリピンとフィジーという選択肢しかなく、必然的に近い方を選んだのだった。初めてのフィリピン留学の成果は、そこそこの英語力を手に入れた程度。つまり、ハイレベルな会話にはついていけないけど、日常会話なら普通にできまっせ的なレベルになった。
フィリピン留学後に就職したタイで、事件は起きた
勤務したのはタイ国内に複数の大きな工場を持つ会社。2010年に入社して2011年にはアユタヤ工場で、生産管理とマーケティング担当のマネージャーになった。
かなりブラックな職場ではあったが、今後タイで仕事をし続けていく上で役立つ経験をたっぷり積ませてくれた会社だったと言える。そこでは、世界市場の約50%を占めるある重要な製品が生産されていた。取引先は大会社で、そこからの度重なる増産要求に追われる日々を過ごし、過去最高の出荷を記録した直後にそれは起きた。
2011年にタイで起きた大事件
皆さんは、2011年のタイで一体何が起きたか覚えているだろうか?まずはこれでも見て思い出して欲しい。
タイで大洪水が起きたのだ。そして私はそのド真ん中、つーか最前線にいたのだ。
タイ洪水(2011年)
2011年にタイで起こった大規模な洪水で、タイの主要都市に甚大な被害を及ぼした。(600万ヘクタール以上が浸水し中部のバンコクまで、58の県に浸水が及んだ)3か月以上続いたこの洪水で、446人が死亡し230万人が影響を受けた。この洪水は世界でも最悪の洪水の一つであると言われ、7つの主要な工業団地も浸水したため、世界銀行の推計によると自然災害による経済損失額の大きさでは、東日本大震災、阪神大震災、ハリケーン・カトリーナに次ぐ史上4位であり、その被害総額は4,000億円弱といわれている。
Xデーが迫りくる
当時は連日タイのテレビで洪水情報を流し続けていた。既にアユタヤの市街地も完全に水に浸かっている状態で、徐々に我々の会社のある工業団地にも水が迫ってきていた。連日必死になって洪水から会社を守るべく、土嚢を積んだりブロックで囲ったりして工場内への浸水を防ごうとしていた。
Xデーが迫りくる中、工業団地内にも徐々に水が浸入し始め「もうH社は沈んだ」などの情報が飛び交う状況になった。どこの会社もベストを尽くして洪水対策をした上で、安全のため社員を避難させていた状況で、私の勤務していた会社だけは日本人社員だけで会社に泊まり込むという恐るべきブラック体質であった。
この時、工業団地の入り口から会社までの途中の道路は既に水没し、普通車ではもう脱出できない状況になっていた。そこで私はロジスティック部門も担当していたこともあって、大型トレーラーを工場まで来させることにした。車高の高い大型トレーラーであれば水没した道路でも走って脱出できるからだ。が、しかし、社長から先輩社員に非情な指令が出た。
『トレーラーに積めるだけの完成品を積ませろ!』
要するに、金に換えられそうな物をトレーラーにたっぷり詰め込めということだった。こうしてトレーラーに積めるだけの完成品を積み込み、そのトレーラーが工場を出発するのを見送るのであった。その時の先輩社員はこの会社恐るべし。社員の安全より金が大事なんだよ。と、こう呟いていたのをよく覚えている。
Xデーがキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
工場水没。
日本人社員全員が工場の2階に避難していた。もはやこれまでと誰もが観念。タイ人の人事マネージャーから工業団地に電話してもらい、救命ボートでの救出を頼んだ。
もう既に日没後なので真っ暗だった。真っ暗闇の中、救出に来てくれた救命ボートに乗り込み湖と化した工業団地の中からようやく無事に脱出できたのだった。
工場が水没した後も大変だった。水没した金型を引き上げろという社長命令で、湖と化した工業団地への突入が命じられたのだ。ジェットスキーやボートを買ってきて、これに乗って工場に行けという指令だった。
最後に
フィリピン留学で語学力をつけてアジア就職すると、物価が安い国で貯金が増えてウハウハなどと、日頃から自身のブログや寄稿先でアジア就職のおいしさについて語っているが、決しておいしい事ばかりでもないことが理解できたであろう。フィリピン留学中でも発展途上国と先進国日本の格差を思う存分感じることができるだろうが、留学中は所詮学校という安全地帯での生活。実社会に出て働くことにより、想像もしない事件・トラブルに巻き込まれかねない。
発展途上国で働くというのは、こういうリスクもあるということを自覚しよう。日本ではあり得ないようなことが起きるわけだ。まだ2011年頃は苦労も色々したし、決して毎日がハッピーという生活ではなかった。それでも、この頃の経験が後々活きてきて、キャリアアップへと繋がっていったのは間違いない。タイ生活10年以上で最もスリリングで衝撃的な事件はこの大洪水だった。まあ、このレベルの事件は一生のうち一度あるかないかなので、アジア就職してもそう簡単に経験できないだろう。
ちなみに、私はこの前年に他の工場で勤務していて工場が水没している。ええ、つまり2年連続で工場が水に浸かるという普通ではあり得ない経験をしているのだ。まあ、自慢するようなことではないけど、かなりスリリングな生活を経験させてもらった。
アジア就職 \(^o^)/
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